★ Please you would cry

卜部ルルで最終回後のお話です。
優しいお話を目指しました。
残念ながらねつ造はしてません、ルルーシュの物語の結末は本編どおりです。

でも、ルルーシュに優しい話のつもりです


藤堂さん・・・？


だれ？それ？

ルルーシュが着ているのはいつもの学生服だった。


スザクに刺されたはずで・・・最後にナナリーの愛してるという声を聞いた。
だから、死んだはずなのだ。
万一生きていても学生服を着ているはずがない。

そしてここはどこなのか・・・霧がかかったようでよくわからない。
とりあえず歩いてみるしかないだろうとルルーシュは足を動かした。


霧の中にボロボロになってしまった門のようなものを見つけた。
白いそれをルルーシュはどこかで見たことがある。

さらに足を進めると、その先に一つ人影を見つけた。

そして、さらに近づき・・・ルルーシュは見覚えのあるその男の顔に息をのんだ。


「う、ら・・・べ？」



「よぉ」


ニッ、と笑ったその男もルルーシュに歩み寄る。


「ラッキーなことに、俺がお前さんのお迎え役になった。ロロってのとシャーリーって嬢ちゃんや、ユーフェミアなんかともめたんだが」
くじで決めたんだから、迎えに来れなくたって仕方ねぇよなぁと卜部が笑う。
誰もかれも死んでしまった、死なせてしまった人たちばかり・・・。

「俺は・・・死んだんだ」

「ああ・・・」

「だったら、俺みたいな・・・俺みたいなやつは、地獄に行くんじゃないのか？」

「さぁなぁ・・・。でも、大方全員がこっちにいる。みんな、お前さんを待ってたよ」

「大方って。」

「ぁー、成仏ってのかなぁ？消えちまったやつもいれば、ひょっこり戻ってくる奴もいる。クロヴィスなんかは一回どっかに行っちまったらしいが、また戻ってきたらしいぜ。」

ほら、来いよと腕をひかれルルーシュはつんのめりながらも又歩き出した。
だんだんと霧が晴れていく。
その場所にデジャヴを感じながら、ルルーシュは不思議そうにあたりを見回していた。

「卜部・・・ここは？」

「おまえさんや、C.C.にいわせりゃCの世界ってやつなんだろうな。意思の世界だ。強い思いを持ったまま死んだ奴なんかはここに来るらしい。協調性のない奴らはどっかいけってことなんだろうな。そんなはみ出し者の集まりだ。」

ぴたり、とルルーシュの足が止まる。

「・・・なんで、笑えるんだ」

「は・・・？」

「お前たちは、俺のせいで・・・俺が殺したようなものなのにっ・・・何で笑えるんだ！」

血を吐くような叫び。
死んだのだからもう苦しいなんて感じるはずもないのに、胸のあたりが重苦しい。
制服の上からぎゅうと爪を立てるように強くつかむ。

その手を卜部はやんわりとほどいて両手で包みこんだ。

「確かに、怨んでたやつもいたさ。だがな・・・そんな奴ばかりじゃない。俺たちはずっとここからお前さんを見ていた、苦しい時何もしてやれなかった・・・。シャーリーって嬢ちゃんもずっと泣いてたぜ。おまえさんを守ってやれなかった、傍にいようと思ったのにってな・・・。」

「そんな、俺にはそんな資格なんて」

「生きてるうちはそうかもしれねえけどよ、もう死んだんだ。どうだっていいとは言わねえけどよ…もう、笑ってもいいんじゃねえか？」

くしゃり、と卜部の手がルルーシュの髪を撫ぜる。
乱暴だが、温かく、優しく・・・。

「笑え、そんで泣け・・・。もう、いいんだ。肩肘張って生きなくても。見つかって殺されることにおびえなくても、生きるために闘わなくても、日本奪還のために闘わなくても、妹のために闘わなくても、お袋さんのために闘わなくても、親友と闘わなくても、世界のために闘わなくても、世界のために死ななくても。もう、いいんだ。ルルーシュ」

ヒュッとルルーシュが息をのむ。
目元がじんわりと熱くなり、涙があふれる。



「頑張ったな。偉かったぞ。」



「っっ、ぅ、ら・・・べっ・・・おれっ・・・・・・よかったのかなぁっ、せかいはっ、やさしく・・・なるかなぁっ・・・！」



「ああ、お前が壊して、作って、守った世界だ。どんな世界よりも優しい、あったかい世界だよ。」

涙は見ないから、と卜部はルルーシュを包み込むように抱きしめた。
堰を切ったようにルルーシュは泣きわめく。
大きく声をあげて。




世界に優しい涙が降る。
涙は世界を潤し、慈しみ、安らぎを与える。
そうしてまたカラリと晴れたなら、その時は優しい笑顔が見れるだろう。


優しい王様の、優しい笑顔が