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気分の赴くままに好き勝手書いていきます。 なのでいきなりジャンルが増えたり減ったり、当面はギ.ア.スを中心にお送りしていきます。
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緋那乃瑞樹様への捧げものになります。
瑞樹様、遅くなりましたがどうぞお持ち帰りくださいませ。
返品、書きなおし要求可とさせて頂きます・

最初は花ことばだったはずなのに、おかしいなぁ・・・?


花飾りやフリルやリボン。
そんな色とりどりのきれいなドレスを着る姉妹たちがうらやましかった。

ブリタニア皇族はなぜだか女児の出生率が少ない。

皇位継承権は後からいくらでも下がるが姉は妹よりも後には生まれない。
マリアンヌはルルーシュを目立たせないように皇子と偽って出生届を出した。

ナナリーが生まれてすぐのころはマリアンヌに駄々をこねたこともあった。

どうしてナナリーは女の子で、自分は男の子なのかと。

でもマリアンヌが困った顔をするから・・・それきりそのことで何かを言うことはなかった。


ルルーシュが皇子として生活していたためだろう、
ナナリーも物心がつく頃には自然に「お兄様」と呼ぶようになっていた。


マリアンヌも「お兄さんだから、ナナリーを」というようになった。


いっそ本当に皇子であればいいのにと鏡で自分の体を見つめるけれど、そんな都合のいい話もなく女である自分に我慢しているしかなかった。


そのうちに母が死に・・・
己が女であるということを知っているのは本当に自分だけになってしまった。


女であるのか男であるのか・・・あいまいで不確かな自分が嫌いで仕方がなかった。


嫌いな自分を認めてもいいと思えたきっかけは・・・初めて自分に花をくれた男の存在だった。

 

「こんなことしかできないが」と食料と共にくれた、小さな花。
花などもらったのは初めてだった。

だから、とてもうれしくて・・・それ以来時折もらえる花の花びらをルルーシュは押し花にしていた。

花は枯れてしまうけれど、そこに思い出が残っていく。
時折その花びらたちを見てもらった時のことを思い出すのがルルーシュの密やかな楽しみだった。

まぁ、それをうっかり藤堂自身に見られたのはいろいろと失敗だったが。


月明かりが明るくて、夜なら人目もないだろうとうっかり土蔵の外へ出たのが間違いだった。


土蔵の扉に背を預けて、月明かりにみる押し花たちはいつもと違うように見えて不思議で、食い入るように見つめていたルルーシュだったが不意に明かりが遮られたことに気づいて顔をあげた。


「何を見ているんだ?」


「っっとt、ととっ」

あわててノートを閉じて後ろ手に隠して後ずさろうとした。
だが後ろに扉があることを忘れて、思いきり扉に後頭部を打ちつけてうずくまるとあわてて藤堂が駆け寄ってくる。

「大丈夫か?」

「だ、だいじょぶです・・・」

それより気がかりなのは今の音でナナリーが目を覚ましていないかどうかだ。
しばらく耳を澄ましているがナナリーが呼ぶ声は聞こえてこない。
そのことにホッとしたとたん、後頭部にズキズキとした痛みが走り始める

「見せてみろ・・・ああ、少し腫れているな。」

冷やすものもないためどうしようもなく藤堂もそれ以上触れないように手を離す。
そうしてルルーシュが取り落としてしまったノートを拾い砂ぼこりを落とす。

「ああ、あまり汚れていないようだ。だが、こんな夜に外に出ているとは感心しないな」

「す、すみません・・・確かに危機管理ができていませんでした」

「それもだが、子供がこんな時間に外にいることが感心できない。もう寝る時間だろう」

その言葉に、ルルーシュは一瞬呆けて・・・そうして吹き出してしまった。
くすくすと笑うルルーシュに藤堂は目を丸くする。

「何か、おかしなことを言ったか・・・?」

「い、え・・・ふふっ、ごめんなさい。こんな風に普通の子供みたいに言ってもらうの初めてで。」

なんだかくすぐったい、と笑うルルーシュに藤堂は目を細め苦々しい表情を浮かべる。

「それに、こんな風に・・・花をもらったのも初めてで・・・」

ルルーシュは藤堂の手からノートを取りぱらりと開いて見せる。
そうして見せられたものが押し花にした花びらだと気づいて藤堂は眼を見開く。

「・・・とっておいたのか・・・?」

「はい・・・嬉しかったので」

「誕生日にもらったりは」

「嫌ですよ・・・僕は男ですよ・・・?誕生日に花なんて」

藤堂はその言葉にまた顔をしかめ、唸るように「そうか」と返すだけだった。

「・・・藤堂さんが、初めてですよ。俺に花をくれたのは」

慈しむように花びらをなでるルルーシュの髪をふいに優しく藤堂が撫ぜた。

「その・・・気を悪くさせたら、すまないが」

「藤堂さん?」

「君は、女の子じゃ・・・ないのか?」

言葉に詰まって、なんと返せばいいか分からず、ルルーシュはただ藤堂を見つめた。

「な、にを・・・言って」

「確かに、未発達で確証はなかったが・・・君の骨格はスザク君のものとずいぶん違う。なにか、事情があるのだろうとは思う・・・だが、頼っては・・・もらえないだろうか?」

藤堂の腕がゆっくりとルルーシュを抱きしめた。
どうしてそんなことを言うのだろうか、とルルーシュは不思議そうに藤堂を見上げる。

「・・・恥ずかしい話だ。20も歳の離れた君に惹かれているなど」

手の中にあるノートが熱をもった気がした。
だが熱をもったのはルルーシュ自身だろう。
頬が熱くなり、頭の芯がしびれてくる。
ぶつけた場所がそんなに痛かったんだろうか、とルルーシュは咄嗟にうつむいた。

「そんな、冗談はやめてください・・・」

「冗談なら、よかったんだろうがな・・・」

困ったように藤堂も笑う。
だが、瞳は真剣なものだった。

「そんな、だって・・・おれ、こんなこどもで・・・何にも出来ないのに」

「何にも出来ないことはないだろう?いつだって、君は妹を守るために頑張っている。俺も何かしたいと思って渡した花だったが・・・こんな風に取っておいてくれるとは思わなかった。」

「俺・・・は、嬉しくて、ほんとうに・・・、誰も知らなくて・・・母さん、が死んで。母さんが、生きてた頃も俺は、お兄ちゃんだったから・・・。わかんなかった、男なのか、女なのか。」

「君は、口調こそ男の振りをしているが・・・女性らしいと思うぞ?」

藤堂はゆっくりとルルーシュの体を離して立ち上がる。
不安げにそれをルルーシュは見上げた。

「藤堂さん?」

「もう少しこうしていたいが、夜も遅い。もう寝なさい」

「・・・はい」

名残惜しげに藤堂を見上げるルルーシュを見て、藤堂は苦笑を洩らしルルーシュの髪を撫ぜた。

「今度から・・・いや、明日からは、君のためだけに花を持ってこよう。」

「藤堂さん?」

「言っただろう、冗談ではないのだと」

ルルーシュの白い頬を藤堂の指が撫ぜる。

「花くらいのことで、君が喜んでくれるなら、俺は毎日・・・君に花を贈ろう」

 


月を背に、そう言う男にルルーシュは見惚れていた。
これも、一目ぼれというのか。

そして、それが・・・嫌いな自分から、抜け出す一歩。

 

 

 *
 *
 *

 

 

作戦決行の直前、ルルーシュは深く息を吸い無頼の中にまで持ち込んだノートを抱きしめた。


「待っていてください、藤堂さん。必ず助けます。」

あいまいで不確かだった自分を、少女だと気づいてくれたたった一人の人。

『ゼロ!配置についたぞ』

「よし・・・作戦を、開始する!」

 

そして、これは嫌いな自分を好きになる、最初の一歩

 

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