★ 盲愛

うっかりと今日の更新を忘れるところでした。
いつも夜中にやってるからつい昨日やってるつもりになっちゃったよ。

最近妙な夢を大量に見てます。
幾つも人は夢を見ているけど大抵1個しか覚えてないって聞いたことありますが、
私は最近3つか4つくらい現実に連れ帰ってきてますww






　

「ルル！どうしちゃったの、その手！！」


「なんでもないんだ、これは・・・」


シャーリーに問われ、ルルーシュは手を後ろにまわした。

なんでもないということはないだろうと思ったがそれ以上問うのは憚られてシャーリーは「そう」と小さく呟くにとどめた。

リヴァルもミレイも、朝からちらちらとルルーシュの手を気にしているが当のルルーシュ本人は何もないとばかりにいつも通りだった。

「ロロ、ルルーシュの奴どうしたんだよ。昨日までは何ともなかったろ？」

「・・・すみません、僕にもよく」

今朝早くに帰ってきた時にはもう両手はすっかり包帯に覆われて真っ白だったのだから。
何があったのか聞いても「なんでもない」の一点張りなのだ。


今朝から同じ質問を何度も繰り返し聞かされているルルーシュもイライラしていた。

「（どうしたか、だと・・・そんなもの、俺が知りたい！）」

今朝目を覚ました時にはなぜか両腕とも肘まで包帯に覆われて、しかも自室ではなく藤堂の部屋で目を覚ましたのだから。

・・・藤堂に皇帝のギアスが掛けられていたことにこれほど安堵したのは初めてだっただろう。

藤堂は呼吸を確認するため、やむなく仮面を外したと言っていたが、もし８年前の記憶が残っていれば仮面の下の顔に何らかの反応を見せたはずだ。
仮面の下にあるのが、まだ年若いブリタニア人だということは決して口外しないと約束させ部屋を後にした。

ギアスは使いたくなかったし、使わずとも藤堂が誰かに言いふらすような人間ではないとわかっているからそれはいい。

それよりも問題は包帯に覆われた自分の手だ。

じくじくとした痛みがわずかにある。
寝ている間に藤堂が何かをしたとは思えない。

少しずれてきた包帯を直しながらルルーシュはうっとりと眼を細めた。

「（こんな時に、不器用な巻き方が愛おしいなんて思う俺は、どうかしているんだろうな）」


＊＊＊


目を覚ましたゼロは、昨夜にあったことを何も覚えていなかった。
ただ、仮面が外れていることに焦りは見せていたが、腕の傷や仮面についた血の跡の理由については何一つ分からないらしく、ただ素顔を口外しないという約束だけを取りつけて部屋を出て行った。

それは信用されているということなのか、はたまた歯牙にもかけていないということなのか。

どちらにしても、この手の中に落ちてくるのは時間の問題だろうと唇の端を釣り上げた。

「中佐、どうかなさいましたか？」

「・・・何がだ？」

「いま、笑っておられたようなので。何かいいことでも？」

「ああ・・・」

失ったものが、ようやくこの手に戻る。
これがどうして笑わずにいれようか。

名前などは後でも知れるだろう、腕の中にあるということが重要だ。


あぁ、以前は遠征にこんなにも憂鬱な気分を感じたことなど・・・





「（本当に、ないのか・・・？）」


記憶に引っ掛かりを感じた。
いつか・・・戦場に行くことに酷く焦燥感ともどかしさを感じた。

それがいつ、どこの戦場だったのかは分からないが、その時にひどく後悔した。
戦場へ赴いたことを。

戦うしか取り柄のない己だというのに、その闘う力が全く役に立たなかった。


そして、再び取り戻した。



記憶の至る所にある穴に今度は眉間にしわを寄せる。
おそらく欠落した部分にはゼロがかかわっていたのだろう・・・、どうしてそれが失われたのかは分からないが。

二度と失えない、失うことが出来ないものだ。

今度失えば、今度こそ正気でいられる自信がない。



今でさえ、正気などとおこがましいほど、ギリギリのところで理性を保っているのだから。