[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
本人さえ幸せならいいだろ的なお話。
まぁなんせBGMが劇場版エヴァですから・・・。
とりあえずルルの意識の上ではこれが幸せ…のつもりです
自己満足ストーリーでよろしければどうぞ。
甘き死よ、来たれ
「俺が死んだって、代わりは居る。」
思わずカっとなって、ルルーシュの頬をはたいた。
咄嗟に力を押さえたあたり、己にもまだ理性があったのだろう。
「君の代わりなど、いない・・・人が、誰かの代わりになれるはずもないだろう!」
「・・・じゃあ、教えてください、藤堂さん。俺が俺でなければならない理由なんてあるんですか?」
ルルーシュは手に持っていたゼロの仮面を投げて、ただ表情もなく天井を仰いだ。
その向こうにあるだろう空を求めるかのように。
「俺は、所詮装置でしかなかった・・・」
その言葉の意味が分からない藤堂は、ただ黙ってルルーシュを見ていた。
「母さんがなぜ死んだのか知りたかった・・・、ナナリーを守りたかった・・・。日本なんてどうでもよかった、ただナナリーを包む世界が優しければいいと思ったんだ。」
一言、一言紡ぐたびにルルーシュの瞳から光がうせていく。
無表情、が・・・まるで本当の人形のように凍りついていく。
触れればまるでひび割れたガラス細工のように壊れてしまうのではないかと思うほどに。
「そうやって、クロヴィスを殺して、ユフィを殺して、数え切れない人たちを殺して行きついた・・・答えが・・・俺は、ただ替えのきく便利なだけの歯車の一つでしかないという事だった。」
触れて、壊れるはずもない。
彼は、人間なのだから。
藤堂は自分にそう言い聞かせてルルーシュへそっと手を伸ばした。
ルルーシュは虚ろな眼差しでそのまま藤堂に抱き寄せられる。
何の反応も、返ってこないことが怖かった。
「少なくとも・・・俺たちには、俺には君が必要だ」
「どうしてですか?」
「どうし、てと・・・いわれても」
「ほら・・・俺じゃなくてもいい」
「俺は、そう言ったことを伝えるのはあまり得意ではない・・・だが君でなければならないとそう思う」
「ゼロとしての俺の能力ですか?それとも」
「そうではない、君自身だからだ」
「・・・作られたものかもしれない。俺としての人格も、考え方も。俺のものなんて何もない」
どうすれば伝わるのか、抱きしめても言葉を紡いでも、ルルーシュでなければならないと伝えきれず、藤堂は歯噛みした。
「ねぇ・・・父親に生きていないと言われた俺は、母親にさえ物として生み出された俺は・・・」
「君は生きている!死んでなどいない!!」
「呼吸をしていたら生きているんですか?心臓が動いていたら・・・もう、生きる意味も何も、分からなくなってしまった。」
最期のスイッチをルルーシュは持っている。
だが、押したくないのだ。
押したくない、けれど・・・ルルーシュの心はマリアンヌやシャルルが仕組んだように、そしてC.C.さえもが仕組んだとおりに、絶望へと向かって転がっていた。
『願えばいいでしょう?ルルーシュ・・・もう、一人ぼっちは嫌でしょう?』
マリアンヌの声がルルーシュへ語りかけてくる。
『もう・・・嫌でしょう?最後の願いを、神に願えば・・・もう嘘のない、寂しくない世界になるのよ』
ルルーシュのギアスを使えば、わざわざラグナレクなど発動させる必要ない。
神がその役目さえ果たせなくなればいいのだから。
「ルルーシュ君・・・俺に与えられるものは、今しかない・・・。今、この瞬間に君が生きているのだと、言うしかできない。信じてもらうことしか、俺にはできないんだ」
『信じたら、裏切られるかもしれないわ、ナナリーのように』
「貴方が、裏切らないなんて、どうして言い切れるんですか?」
「君が望むなら、何があっても、守ってみせる。」
『貴方の知らないところで、秘密を作って、離れて行ってしまうかもしれないわ、スザク君のように』
「だから、昨日に絶望しないでくれ。」
『もたらされる明日は、あなたに優しくないかもしれないわ』
「生きることに、絶望しないでくれ。」
『彼の記憶が、あなたにとって絶望になるかもしれないわ』
「君が望むなら、君のために、俺が優しい世界を作ろう。」
優しい世界
求め続けた世界は手に入らなかった。
望んだものは、何一つ手のひらの中に残らなかった。
「とうどう、は・・・作れる、か?」
「作ってみせよう。ゼロの名が重いならば、君はもう何もしなくていい」
だらり、と垂れ下がったままの腕がゆるゆると藤堂の背へと回った。
『本当に、いいの?その人も、あなたを裏切るかもしれないわ』
「代わりに、俺は再び奇跡の名を掲げよう。」
C.C.は、何も語らないまま記憶を閉ざした。
ナナリーは、何も知らないままゼロを拒絶した。
スザクは、すべて知っていながらルルーシュの傍を離れ、ルルーシュを売った。
父親は、すべてが盤上の空言とでもいうように命を否定した。
母親は、盤上の空言を成すために、ルルーシュを生んだ。
そして、守りたかった人も大切だった人ももういない。
ルルーシュは、力なく藤堂の背に腕をまわしたまま、藤堂に凭れかかった。
きっと、もうすぐ己は死んでしまうだろうと思いながら目を伏せる。
『いいのね、ルルーシュ・・・それで』
『世界は、あなたに優しくならないわ』
『王の力はあなたを孤独にするわ』
『それでもいいのね』
答えはしなかった。
そして、マリアンヌの声も、それ以上は語りかけてこなかった。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは死に、ルルーシュ・ランぺルージとしての意義もなくし、ゼロの名も失う。
それでも、いい、と思った。
何度も、何度も、もう死んだのだから。
名前のない、何かになってしまっても。
この腕が包んでいてくれるなら、それでいいと思った。
最期の死はきっと・・・優しくこの腕に包まれたままゆるやかに・・・。
++++++++++
++++++++++
藤堂とゼロが同時に指揮に立つようになり、そのうちゼロは姿を見せなくなった。
こうして、一つの軍事組織の頂点に立って見て、藤堂はルルーシュの言葉の意味がよくわかった。
幹部と言ってももともと軍人だったわけではない彼らは、率いていくリーダーなど誰でも構わないらしい。
傍目に見て、何も言わないゼロだから、まるで彼が利用していたかのように見えるが本当のところは違う。
下に集う者たちが勝手に彼を奉り上げて日本を取り戻すために利用していたのだ。
現に、超合集国が作られた今も、幹部の多くは日本人で、日本のために戦っているのだと勘違いしている。
四聖剣であったはずの千葉と朝比奈でさえも。
1年の投獄生活と、生ぬるい騎士団の空気が彼らをも変えてしまったのか。
情けない、と思うより先に悲しさがあった。
先に散っていった卜部にも仙波にも申し訳が立たない。
だがいまさら言ってもどうにもならず、藤堂は口をつぐんでいた。
戦略会議を終え、藤堂は書類をまとめると自室へと足を向けた。
書類仕事は星刻の連れてきた文官たちがさばいてくれるから、それらの決裁に藤堂は目を通すだけでいい。
部屋に戻ると、朝出た時と同じまま、ルルーシュはベッドにうつ伏せになり、うつらうつらと夢と現実の狭間をさまよっていた。
もうどれほどの間、ルルーシュはそうしているだろうか。
どうしてもゼロの存在が必要な時以外ルルーシュは藤堂の部屋から出ない。
もともと細かった体にはもう最低限の筋肉しか付いておらずさらに細く小さくなっていた。
「ルル・・・」
名前を呼ばれて、ルルーシュは何度か瞬きをし、ゆっくり顔を上げる。
「とうどう・・・。」
ルルーシュの名前を縮めただけの「ルル」が、彼にとっての最後の名前だった。
緩く笑みを浮かべて、ルルーシュは体を起こすと藤堂に向って腕を伸ばした。
机に書類を起き、藤堂はルルーシュを抱きしめる。
まるで猫のようにルルーシュは擦り寄る。
ゆるやかに壊れて、死んでいくルルーシュを藤堂には止められなかった。
結局、ルルーシュは最後まで自分を殺していた。
それでもいい、と藤堂は思っていた。
ルルーシュを抱きかかえてベッドに腰をおろし、抱きしめる。
ルルーシュも藤堂の体に腕を回し、藤堂に体重を預ける。
それでも重い、と思えないほどにルルーシュは軽かった。
「とうどう・・・もっと」
「ああ」
力を強めて、さらにきつく抱きしめる。
きっと苦しいだろうに、ルルーシュは笑みを浮かべたまま藤堂に凭れた。
「ルル・・・全部終わったら・・・。誰もいない所へ行こう」
「うん」
「誰も居ないところで、静かに暮らそう」
「うん」
「もう少し、だ。もう少しの辛抱だからな」
最期の死は、緩く優しく。
ルルーシュの望むままに、ルルーシュを包んでいた。
04 | 2025/05 | 06 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | ||||
4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
福岡にオタク友達がいなくて偶に鬱々してます。
寂しいと死にはしませんが不貞寝します。
空を自由に飛びたいなぁなんて夢を持っています。
いつかパラグライダーかハンググライダーをする気でいます。
マイペース、ケセラセラを心情に頑張って生きています。