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気分の赴くままに好き勝手書いていきます。 なのでいきなりジャンルが増えたり減ったり、当面はギ.ア.スを中心にお送りしていきます。
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幼児退行続編です。
展開が早い早いv

 



ノックの音でルルーシュは目を覚まし、僅かにぬれていた目元をぬぐって仮面をかぶった。

「なんだ」

「あ、そろそろ会議の時間だから。」

「あ、ああ・・・そうだったな」

声からして先ほどの扇という男だろう。
ルルーシュは、仮面が外れないことを確認して必要だろうと思われる作戦の書類を腕に抱えると扉の外に出た。

「具合は、どうなんだ?」

「悪くは、ない」

そう、悪くはない・・・。
決して良いとも言えないが・・・。

「どうする・・・?会議を後日にするか?」

「いや・・・その必要はない。」

だろうな、と扇はため息をついた。
だが、辛いことには違いないだろう・・・いつだって先に立って歩くゼロが今はどこかおぼつかない足取りでふらふらとしながら扇の後ろを歩いている。
その姿はいつもより小さく見えた。

いや、実際自分たちが彼を少々偶像視しすぎているのだろう。
人種の違いのためか身長は同じくらいか自分の方が低いが、肩幅の細さや華奢さがまだ彼が若いのだと教えている。
下手をすればカレンと同い年くらいかもしれない。

「ゼロ」

「・・・・・・なんだ?」

「やっぱり、会議は明日にしよう」

「だから、その必要はないと」

「ある。いつもは体調不良さえ隠してみせる君が、今日はそれさえ出来ていないんだ。書類は俺が預かっておくから、ラクシャータのところに行った方がいい」

「それは・・・」

「ゼロにはまだ言っていなかったが、あれはリフレインの原液だったんだ。毒に耐性があるからと言って麻薬にまでそうとは限らない。大丈夫そうかと思っていたけど、やっぱり心配だ。」


「し、ん・・・ぱい?」

思いがけない言葉を聞いたと言わんばかりの声音に扇は胃のあたりがずしりと重くなった。
信用されていない、ということなのだろう。

「ああ・・・心配だよ。なんだったらこの案件は俺たちである程度まとめておく。だから、今日は休んでくれ。」

この、扇という男は・・・この仮面の下にいるのがブリタニア人ということさえ知らないのだろうか。
ルルーシュはそう思った。
だが、いくらなんでもそれはないだろう。
けれど知っているならなぜ心配などするのだろうか・・・。

わからない・・・。

その分からないという恐怖にルルーシュはそこから逃げ出したくなった。

「扇、何をしている?」

「あ、藤堂さん。ちょっと、ゼロの具合が悪いみたいなので」

扇ではない声に、ルルーシュは体中に電気が走ったかのような衝撃を受けた。
この声を、ルルーシュは知っていた。

『大丈夫か?』といつも気にかけてくれた声。
その言葉を心が期待したとしても、仕方のないことだっただろう。

「そうか、なら会議は」

「(なんで・・・?藤堂さん・・)」

気づいてよと心が悲鳴を上げる。
だが、藤堂の目線が向けられているのはルルーシュの持つ書類と扇にだけだ。
ゼロへは一瞬目線を向けただけで・・・

「・・・だ」


「ゼロ?」

「どうした」


ようやく向けられたまなざしだったが、ルルーシュは息が詰まるかと思った。
温度のない、瞳。
ゼロに対して・・・何の感情も持っていないのだろう。

不信感なんてものじゃない。

無関心だ・・・。

 

「いやだぁっ・・・」

「っゼロ?!」

ルルーシュは書類をぶちまけ走り出した。
はらりと舞う紙と走りさる後ろ姿に二人は呆然としたまま見送る。

「扇、ゼロは・・・具合が悪いのでは」

「いえ・・・それが、その体調の問題じゃなくて」

扇は気まずそうに先ほどあったことを話した。
その内容に藤堂の眉間のしわは深くなり、ゼロの消えた通路を見送る。

「とにかく、あんな姿のゼロを見られてはまずいな」

「ええ・・・とりあえず追いましょう。俺は、他のみんなに知らせてきます」

扇は散らばった書類を集めるためにしゃがみ、藤堂はそれを踏まないよう越えていくとゼロを追って走り始めた。


*****

ほかに曲がる道もなく、ゼロの私室は通り過ぎた。
だが、すぐに見つけることができるだろうと思っていたゼロはなかなか見つからなかった。

さしものゼロもたまったものではないだろう。
精神状態が不安定だというのならそれなりの対応をしなければならない。

「一体何処へ・・・。」

もう一度通路を戻るべきかと藤堂は振り返り、格納庫まで行ってみるかと足を向けようとして、柱の陰にうずくまるようにしてしゃがみこんでいたゼロを見つけてしまった。

なかなかにシュールな絵面だ。
それに気配をうまく隠していた。
どちらかといえば気配に敏感な藤堂に気づかせないのだから相当のものだろう。

「・・・ゼロ」

ビクリッと方が跳ねますます縮こまるように体を小さくする。
一体何がどうなればこんな反応を見せるのか。
藤堂はため息をつくとゼロの前に膝をついた。
そのため息にさえゼロは息をのむような声を洩らす。

「ゼロ・・・他の団員に見られるとまずい。具合が悪いなら部屋へ」

「っゃ!・・・」

「ゼロ」

「いやっ!いやっ、ゼロじゃないゼロなんかじゃない零なんかじゃない!」

ゼロなんかじゃないといわれても、藤堂はゼロの表の名前を知らない。
まったく、厄介だなと思ったのが伝わったのだろうかゼロは顔をあげ、目の前に腰をかがめている藤堂の体を勢い良く突いた。

「なんでっ・・・僕は零なんかじゃないこんな場所知らない!」

とっさのことで藤堂はわずかによろめき眉をひそめた。
まるで駄々っ子だ。

「・・・わかった、とにかく・・・とりあえず落ち着いてくれ。」

「いやぁっ!どこなの!ゼロなんか知らない!ナナリーに会わせてっ、スザクに会わせてえっ。僕をっ、そんな目で見ないでよぉ・・・」

ついにはっきり分かるほどに泣き始めたゼロに藤堂は困惑する。
だが、気になったのはゼロの口から飛び出た名前。

スザク・・・これはつい先日決別した自分の弟子だ。
ナナリー・・・聞き覚えのある。記憶の糸をたどるとその名前の持ち主よりも先に出てきたのはその兄である少年。

だが・・・その少年はこんな、すぐに泣きだすような子供ではなかった。
しかし一度連想してしまうと、そうではないのだろうかという思いがちらりちらりと胸をよぎる。

ゼロと少年にはいくつも酷似した点があるからだ。

「落ち着いてくれ、頼むから・・・。」

名を呼ぶのははばかられた。
本人でなければ、ゼロにその名を教えたくないと藤堂はそう思ってしまった。

だから、先に仮面に手をかけた。

ぶたれるとでも思ったのだろうか。
のばされた手におびえたようにゼロが首をすくめる。
そんなとっさの仕草が似ているように思えた。

仮面の側頭部についていたボタンを押すと、カシュカシュンッと作動音がして仮面が緩くなる。
仮面を取られることに抵抗もせずに(普段のゼロならありえないだろう)ゼロの素顔は暴かれた。

大きく潤んで、今にも零れおちそうな紫水晶の瞳。透けるように白い肌、日本人よりもなお黒い髪。

それは、間違いなく藤堂が・・・好いていた少年だった。

「ルルーシュ君、だったんだな。」

名を呼ぶとゼロはぶわっ、と涙をこぼしこぶしを握って藤堂の胸に殴りかかった。

「嫌いっ、藤堂さんなんか嫌いっ・・・」

「済まない・・・気づけなくて」

「嫌いっ、あんな目っする藤堂さん、僕は、零なんかじゃないのにっ・・・生きてるって言ってくれたのにっ」

今のこの少年が、どうして自分にゼロなどという名前を付けたのか、藤堂は知らない。
自分は死んでいるのだと、うつろな瞳で言った少年の死を否定したのは自分だった。
藤堂が悪いわけではないが、リフレインのせいでこうして記憶が錯乱している少年には、ゼロと呼ばれるのは余程つらいことだったのだろう。

「済まない、ルルーシュ君。」

殴られた場所よりも、ルルーシュに「嫌い」などという言葉を使わせてしまったことがいやだった。
藤堂は泣きじゃくるルルーシュを抱き寄せて「済まない」と繰り返す。


扇たちがやってくる頃には、ルルーシュは力尽きて眠りへと落ちていた。




 

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