ブリタニア側にはシュナイゼルとコーネリア、そしてカノン・・・黒の騎士団側からはディートハルトと星刻、超合集国からは神楽耶と天子が出席する臨時の会議の場に、思いがけぬ人物が登場した。
「お邪魔するわね」
「っ、アーニャ・アールストレイム、ここを何処だと思っているのかしら」
「あら、カノン・・・だったかしら。」
「知らん、私に聞くな」
突然の珍客はナイトオブシックスとC.C.と呼ばれる謎の少女、その後ろからどやどやと黒の騎士団幹部が雪崩れ込んできた。
「申し訳ない、止めても聞かなくて」
「当たり前だろう、私はゼロの共犯者だったんだ。何故お前たちの言うことを聞かなくてはならない。」
「わたしも、今はナイトオブシックスだもの。敵のはずの貴方たちの言葉を聴く理由は無いわ」
いつもよりも流暢に話すアーニャにブリタニア側は困惑し、最近大人しかったと思えばコレかと騎士団側はC.C.に軽く怒りを燃やした。
「ちょっと面白いお話をしにきたの、聞いてくださる?」
「それは、この場に関係のある話かな?」
いち早く立ち直ったシュナイゼルにアーニャが妖しく笑う。
「ええ、とっても。だって、可愛い可愛いルルーシュの話だもの。あ、日本の皆さんは安心して大丈夫よ。もうすぐルルーシュが優しい世界の神様になるから。」
アーニャの突拍子も無い言葉に全員が唖然とする。
C.C.だけは呆れたように肩をすくめた。
「マリアンヌ、最初から話してやれ。こいつらの理解が追いつかない」
再び激昂する騎士団だが、その言葉は確かだ。
まったく持って脈絡が無い。
アーニャは「あら、そう?」と笑って勝手に空いている席に着いた。
「マリアンヌ・・・とは、どういう意味だ」
「・・・・・・アーニャ・アールストレイム卿、いや・・・貴方は本当にマリアンヌ皇妃なのですか?」
「ふふふ、シュナイゼル殿下は相変わらず理解が早くていらっしゃるのね。そうよ、久しぶりね。私はあなたが護り損ねた、マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア。ルルーシュとナナリーの母親です。」
納得がいかない、と全員顔を顰める。
だが、一部の人間にはこの事態を簡単に解決する言葉が思いついた。
「・・・・・・ギアス、ですね。マリアンヌ様」
「ええ、そうよ。私は死ぬ前に、この体の持ち主にギアスを掛けた。私のギアスは移り変わりのギアス。私の体が死んでしまった今はもう使えないけれど、簡単に言えば他人の体に私の一部を植えつける能力ね。」
ニコニコと無邪気に笑いながら言うアーニャ、いやマリアンヌに全員がぞわりと背筋を振るわせた。
「今日は皆さんにお礼を言っておきたくて来たの。」
「お、礼って・・・どういうことなんですか?貴方は、あいつの、ルルーシュのお母さんなんですよね!ならなんで今まであいつの前に姿を現さなかったんですか?あいつはギアスを知ってる、たとえ姿が違ってもあいつなら」
「ええ、ルルーシュならきっと、私が生きていてくれたことに喜んでくれたでしょうね。でも、それじゃぁ駄目なのよ」
「貴方の目的は・・・皇帝と同じところに・・・ということですか?」
「そうなるわね、少し今は違うけれど。でも、私の計画通りに進んでくれてよかったわ、皆さんありがとう。ルルーシュを傷つけてくれて。」
なんと言われたのか分からず、全員が言葉に詰まる。
仮にも母親だというならば、ありえない言葉だ。
だが、マリアンヌは相変わらずニコニコと笑っていた。
「傷つけ、て・・・って・・・」
「貴方は、カレンさんよね?この子の記憶どおりなら。」
「は、い・・・」
「私の目的はね、シャルルかルルーシュのどちらかをこの世界の新しい神様にすることだったの。今の神様はとっても嘘つきで残酷な世界しか作らないから。でも、シャルルはもう駄目ね。」
「申し訳ありません、少々よろしいでしょうか?」
信じられない、と瞳を揺らすカレンから視線をそらし神楽耶へ赤い瞳を向ける。
神楽耶は唇をかみ締め、マリアンヌを見据えた。
「神、とはどのような存在でしょうか?人の理を動かせる存在なのですか?」
「いいえ、違うわ。概念よ・・・そうね、分かりやすく言えばこの世界は水槽の中。神様は水槽の外から魚たちを見ている人間って所かしら。今居る魚たちは争いばかりする、もちろん魚も悪いのかもしれないけれど、観察している人間の管理も悪いというところね。」
「・・・そのことと、ゼロを傷つけるということにどのような関係が?」
マリアンヌはにっこりと笑い部屋の中の全員を見回した。
「みんな、手段は違えどルルーシュの心を傷つけたわ。コーネリアは私を助けなかった」
「それはっ」
「私の命令だから?でも、本当の軍人なら命令違反をしなければいけないときもあると知っているでしょう?貴方は私を見捨てた。でも構わないわ、だって私が死ななければルルーシュの物語は始まらなかったもの。ナナリーが生き残ってしまったのは誤算だったけれど、でも良い計算違いだったわ。あの子はナナリーが傷ついて一人では生きていけなくなったおかげで、自分が傷つくことに頓着しなくなったんだもの。そして、この国へ来て初めてやさしくしてくれた大人、藤堂鏡志朗も裏切った。」
「っ・・・」
「貴方の判断は軍人として正しいわ。不要な上司は切り捨てるべきだもの。そしてあの子ははじめての親友を得た、でもその子はユーフェミアの騎士になってしまったわ。この国で隠れていなきゃいけなかったあの子の危険につながるとも知らずに、そしてあの子の手を拒んで、あの子の存在を否定して、ナナリーを取り上げて、皇帝に売り渡した。スザク君には感謝しなきゃいけないわね」
くすくす、と笑うマリアンヌに背筋がぞわりとあわ立つ。
「そして、貴方はスザク君に撃たれたルルーシュを見捨てて逃げ出した」
今度はびくりとカレンが体を震わせた。
「皇族に戻ったナナリーはルルーシュの手をやっぱり拒んだ。ナナリーは正直いらなかったけれど、ルルーシュを傷つけるのにとっても役立ってくれたわ。そうしてルルーシュはどんどん世界から追い出されて、とうとうこの黒の騎士団だけが居所になった。だって、シャーリーちゃんも死んだんだもの、学園になんか帰れないわよね。でも、シュナイゼル殿下のせいで黒の騎士団にも追われて、あの子は今一人ぽっち。きっと、とっても傷ついているわ。でも、あの子は自分の手の中に居るお魚さんに酷いことは出来ないからきっとCの世界へシャルルと一緒に閉じ篭るわね。もう二度とこの世界にギアスが生まれないように。」
「マリアンヌ様!ナナリーがいらないとは、どういうことなのですっ。それに、何故ルルーシュを・・・ルルーシュが、こうして・・・ブリタニアに反逆をすると読んでいたのですか?」
「あら、おかしなことを言うのねコーネリア。ユーフェミアを殺されたのにいまさらルルーシュの心配をするの?でもダァメ。いまさらルルーシュの心を治されちゃったら困るわ。ナナリーはね、ルルーシュが駄目だったときの保険だったのよ。でも、あの子は頭も悪かったし、出来るのはKMFの操縦だけ。だから一緒に殺してしまおうと思ったの。そうすれば、ルルーシュの心を傷つける役にくらいは立つでしょう?」
「狂ってる!そうまでして一体貴方は何をしたかったんだ」
「だから、言っているでしょう?ルルーシュをこの世界の神様にするの。ルルーシュは頭の良い子だから、きっとアーカーシャの剣の使い道に気づくわ。そうして、ブリタニアをきっと焼き払うでしょうね。そうしたら、日本は帰ってくるし、あの子の作った超合集国のシステムのおかげであと100年くらいは平和でやさしい世界が作れるわ。もっとも、シャルルが使ってしまえばブリタニアだけじゃなくて世界のすべてが消えてしまうでしょうけれど。」
ころころと鈴のように笑う。
「じゃ、あ・・・ぜんぶ・・・貴方のせいだったの?」
「そうかもしれないわね。でも些細なことよ、ルルーシュという歯車に付け替えることによって世界は変わる。」
「あいつが・・・あんなに苦しんで。あんなに悩んで選んだ道だったのに。ぜんぶ、貴方が仕組んでいたの?」
「そうよ。最初は、あの子を媒介にしようと思ったの。でも、私じゃ優しい世界なんて作れないわ。だって私、やさしい世界に住むほうが好きだもの」
ついにぶち切れたカレンがマリアンヌに殴りかかった。
だが、逆に腕をとられ投げ飛ばされる。
「ふふ、さぁ・・・最後の仕上げに行かなくちゃ」
「あいつに!ルルーシュに何をするつもり?!」
「本当のことを言うだけよ。私は貴方を愛してなんかいなかったって。利用するために生んだのよって。きっと、あの子は傷ついてブリタニアを消してくれるわ」
「・・・貴方は、そうまでして何をしたかったのです。何を得たかったのですか?」
シュナイゼルの震える声を聞くなど、長年兄妹としてやってきたコーネリアも副官を務めてきたカノンも初めて聴いた。
だが、その声はこの場に居る全員の代弁だろう。
誰もが青ざめてマリアンヌを見つめていた。
「あら、私はただシャルルとC.C.と私とV.V.の4人が幸せに暮らせる世界がほしかっただけよ」
マリアンヌが笑った。
無邪気な少女のように。
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すいませんごめんなさい。
マリアンヌ様真っ黒というか・・・かなり壊れてます。
いろんな部分が壊れてます。
でも書き上げてなんだか満足しました。
コレが私のマリアンヌ様像です