★ 月下に咲いた

ようやくの再会…にはまだ時間かかります。
すいません、ホントすいません

でも藤堂さんいじめるのって楽し（ゲフゲホッ）

「傷は深いけどぉ・・・大したことはないわぁ。安静にしてれば、そのうち良くなるんじゃなぁい」

点滴と機械につながれ眠るゼロの顔色は戻っていた。
いや、藤堂にとって、それはゼロではない・・・。

「それとぉ・・・藤堂ぉ、あんたの予想通りだったわよぉ。はぁい、これ検査結果」

「そうか・・・すまない」

藤堂は紙を受け取り、だがそれは見ないままにまたルルーシュに視線を戻した。
1年と少し前に会った時よりも大人びて見えるのは・・・これまでの苦労のせいだろうか・・・。


苦労・・・していたのだろう。
たった一人で子供を産み、育てて・・・。
まだ17歳だというのに・・・堕ろすという選択肢もあったはずだというのに、たった一人ゲットーで子供を育てていた。

なぜ言ってくれなかった、とは言えない・・・。
連絡の付けようもない、おまけでゼロである彼女を受け入れようともしなかった自分にそんなことを言う資格もないだろう。

何を今更、と言われてもいい・・・。





1年前に彼女に抱いてくれと頼まれた時には何の気の迷いかと思った。
彼女ほどの容姿を持っているなら、相手は何もこんな中年男でなくともいいだろう。
だが、彼女は自分がいいと食い下がった。

年が年とはいえ女日照りで、性処理もままならず過ごしてきた藤堂にとってその誘いはひどく魅惑的だった。
藤堂とて男なのだ・・・。

そうして、結局欲望に負け、藤堂はルルーシュを抱いた。


まさか、あの一回で子供ができるとも思わなかったが・・・。


できる限り優しく抱いたつもりが、それでも初めてだった彼女にとっては負担だったらしい。
けれど彼女はつらそうな顔など一度も見せず、幸せそうに笑って藤堂に抱きついていた。

結局ともにいたのはその数日間のことでしかなかったが、別れてからも藤堂はルルーシュが気になっていた。
負担をかけてしまった体のこと。
自分がいいのだと言ってくれたこと。
何も言葉を返せなかったこと。

時間があれば彼女のことばかり考えるようになり・・・そうして気づいた時にはルルーシュを好きになっていた。

ブリタニアを憎む彼女だ。
なんとしても日本解放戦線のもとで、ブリタニアを倒し・・・そうしたら迎えに行こう。
もしかするとその時には誰か他に愛するものを見つけているかもしれないが、それでも彼女がもう怯えることのない世界を作れたらそれだけでよかった。

だからこそ、その媒介であった日本解放戦線と片瀬が死んだと聞かされた時に絶望した。
黒の騎士団とは根本的に思想が違う、自ら騎士団へ足を向ける気にもならず藤堂はその先をどうするか迷っていた。

そうして、油断していたところをとらえられた。


死ぬならそれでいい。
心残りは、ルルーシュの生きるための世界が作れないこと。



だが・・・生きることを諦めたと告げた時、彼女はどんな思いをしたのだろうか。
たとえ彼女の心が今は離れていたとしても・・・知り合いが自ら死を選ぶなどと言ったら・・・。
たぶん、傷ついていただろう、仮面の下で。
傷つけてしまっただろう・・・。

彼女を思うなら、己は何としても生きていなければならなかったのに。
あそこでもし死んでいたら、と思うと今更ながらにぞっとした。

彼女を置いていくことがこんなにも恐ろしいのだと、初めて思い至った。

「ルルーシュ君・・・早く、目を覚ましてくれ」

小さく細い手を強く握る。

「俺は・・・君に謝らなければならないことばかりだ・・・。」